休みの時間は蜜の味:労働者の健康と幸福における仕事ストレスからの回復の重要性 – Time is honey: The importance of recovery from job stress for workers’ health and well-being

休みの時間は蜜の味:労働者の健康と幸福における仕事ストレスからの回復の重要性 – Time is honey: The importance of recovery from job stress for workers’ health and well-being

本記事は、「仕事ストレスからの能動的な回復としてのレジャー・クラフティング:日本における縦断研究」の共同研究者の Jessica de Bloom 博士の記事を、本人の許可を元に翻訳し、掲載しているものであります。

簡単に要約を記します。

スマホ等の IT デバイスの発達により、現代人は24時間365日、仕事に接することが可能になり、また、接することを要求されることも出てきました。そのような時代にあっては、逆に、よく休むことが個人の幸福や仕事の生産性について考える上で重要です。
そういう背景の中、休み方の類型として、 DRAMMA を頭文字にもつ6種類が提唱されています。より健康で、幸福で、より生産的であれる方法を探索する方法の1つとして、自分の休み方を見直すことがあります。

これは私見ですが、休み方についての研究することは、なにも、従業員を公私共に管理するという思想に直結するものではありません。産業文脈の保健衛生の最近の潮流は、離職や疾病等のネガティブの抑制という観点のみならず、どう健康で、生産的で、幸福であるかという、ポジティブな側面の伸長という観点の研究も中心的な話題の1つになっています。(ワーク・エンゲイジメントはその最たるものです。)
であれば、仕事の時間のみを調査研究の対象とし、仕事の生産性についてのみを結果変数として考えるのはむしろ不自然ではないでしょうか。あくまで産業の文脈から発展した分野ではありますが、仕事の中と外について融合して考えることで、健康、生産性、幸福にアプローチする分野の1つが、このレジャー・クラフティングの分野であります。wevoxのサービスとしての守備範囲は、今は仕事の文脈を専門としておりますが、ゆくゆくはこういう分野も含めて、広く価値提供できるようになればと考えています。

 

前置きが長くなりました。以下原文を翻訳し一部註を加えたものです

近年、経済活動のグローバル化や、労働力の高齢化に加え、技術の発達によって、仕事の様子が一変している。仕事の形はより柔軟で多様性を持つとともに、その要求度も高くなっている。多くの人々が、過多な情報にさらされ、新しいスキルを習得し続ける必要に迫られている。仕事とプライベートの空間的、時間的境界も消失し、いまやテクノロジーのおかげでいつでもどこでも仕事をすることができる。結果として、プライベートや余暇の時間までもが、仕事の時間に化けてしまうことも少なくない。このような現象は、従業員が余暇の時間に仕事ストレスからの回復をすることを妨げ、健康、幸福感、仕事のパフォーマンスに有害な影響を与えている。このような状況に対して、私達は何ができるのであろうか?

まず何より、回復のための時間を増やすことが肝要である。フィンランドでは、仕事からの回復の機会として(長期)休暇を取ることが認められている。多くの科学研究が示しているように、休日が従業員の健康や幸福感を増加させる。休日にパートナーや家族と旅行に行った人の多くは、そこで関係の改善や、繋がりの強さを感じるようになったと答えている。それに加えて、私たち(訳註: Jessica de Bloom氏とその研究グループこと)の研究では、休日の後は認知的柔軟性(訳註:思考を切り替えながら、複数の事柄について考えていく能力。 cognitive flexibility)が高まっていることが示された。具体的に言うと、その人から出てくるアイデアの多様性が、休日の後のほうが高まっていた。これは、休暇が創意工夫(原文: think outside the box)のレベルを高めることを示している。

休暇にはこのようなご利益がある。一方、休暇さえあれば、日々の仕事とプライベートのバランスの崩れを完璧に回復してくれる(原文: silver bullet)というものではない。仕事からの回復を考える際には、このような長期休暇のみならず、日頃の小さな休息も重要となる。長期的な視点では、日々の休憩時間、良質な自由時間は、健康で、幸福で、生産的であることにとって不可欠である。

ここ数年で、タンペレ大学の我々の研究チームは、午後のコーヒータイムやランチ休憩などの短い休息についての研究をまとめた。仕事中の休憩は、仕事の要求度が高まっている中で、従業員の活力や生産性を高く維持することに寄与することがわかった。それと共に、同僚を助けること、それぞれの仕事の良い面に目を向けること、明確な目標設定が、積み上がっていく仕事の疲労から従業員を守ってくれることもわかった。フィンランドの15の会社と共同で行った介入研究では、昼食時に、付近の公園を歩き、深呼吸する事によって、午後の疲れが軽減され、集中力が高まることもわかった。(訳註:このように、仕事の負荷を軽減してくれるものは、なにも休日や長期休暇に限らず、仕事の合間の休憩によっても軽減の効果は得られるのである。)

疲弊した状態で家に帰ると、仕事の事が頭から離れず、リラックスすることが困難だったり、趣味等の活動のやる気がでなくなってしまったりする。夜の時間を無為に過ごしてしまうことは、更に彼らのエネルギーを奪う原因になってしまう。それとは対象的に、仕事中に程よく休憩をはさみ、自分のエネルギーをうまくコントロールできている人は、家でも心地よく休むことができる。それによって、彼らは良い状態で夜の時間を過ごすことができ、更に活力的になれる。

最近のメタアナリシス(統合研究)によって、有効な休暇には D・R・A・M・M・A の6種類があることがわかってきた。 Detachment (仕事から離れること)、 Relaxation (リラクセーション)、 Autonomy (自主性)、 Mastery (習熟)、Meaning (意味)、Affiliation (帰属)である。

Detachment は、仕事から精神的に切り離されることである。たとえば、趣味等に没頭しているときなどは、仕事から精神的に切り離されている状態である。仕事から帰ったら社用携帯の電源を切り、仕事とプライベートの境界を明確にすることも Detachment を促進することに繋がる。 Relaxation は、おちついて、静かにしている状態のことで、肉体的にも精神的にも活動レベルが低い状態のことである。フィンランド人にとっては、サウナに入ることが最も馴染みある Relaxation だろう。(訳註: Jessica はフィンランドの大学に所属する研究者である) Autonomy は、どのような活動に従事するかを自らの意思で自由に決められるということである。例えば、休日の間にやっておかなければいけない雑事があったとしても、自分が楽しめる用事を優先するということも Autonomy の例である。 Mastery は、休暇でありながら、努力と集中を要することもある。つまり、語学の習得や、新しいスキルの獲得、楽器の演奏等に取り組むことが Mastery にあたる。これによって、私達は達成感を得たり、成長したりできる。 Meaning は、ボランティアに参加したり、孫の面倒を見たりなど、本人にとって意義ある活動に参加し、自分の人生の意味を実感することである。 最後に Affiliation は、なにかに「所属」することである。他の人の面倒を見たり、見られたり、家族や友人との社会的な関わりを持つことである。

まとめると、日頃から短期の休息を取ること、たまに長期の休暇をとることが、長期的視点で健康や生産性を高める上で欠かせない役割を担っている。自由な時間というのは、人々の生活の質(QOL)に関わるものであり、全てのヨーロッパの従業員には定期的に休息を取る権利がある。上記の6種類の休み方をバランスよく取ることが、自分のかけがえのない時間を有効にしてくれるだろう。

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