ミッションを全社員に浸透させ、「全員参加型経営」を実現する

ミッションを全社員に浸透させ、「全員参加型経営」を実現する

実践的な組織づくり戦略や組織改善プラットフォーム「wevox」の活用方法を紹介する「活用事例シリーズ」。今回は、主体性を持つ社員の育成に力を入れている株式会社メンバーズにお話を伺いました。2020年4月からカンパニー制に移行し、より大きな組織として新たなスタートを切る同社に、組織づくりの「想い」や「こだわり」を伺いました。

 

INTERVIEWEE

執行役員 早川智子
前職ではベンチャー企業にて人事責任者およびコンテンツ事業責任者として従事。2012年7月メンバーズ(Webガーデン仙台)入社。ニアショア推進室長として仙台・北九州拠点(約140名程度)マネジメントを経て、2018年4月よりラーニングプラットフォーム室長として人材育成責任者として従事。女性管理職比率30%超、対象男性社員の育児両立支援制度利用率50%超などの推進も行う。

HRエンゲージメント室室長 小林邦明氏
2004年に新卒としてメンバーズに入社。ネット広告代理店事業部~モバイルメディア事業~クライアント側マーケティング担当などを経験し、その後ソーシャルメディアなどの領域でエンゲージメントマーケティングに従事。2012年からコミュニケーションデザインディビジョンディビジョン長としてマネジメントを行い、2016年からはユニットプロデューサー兼マネージャーとなり2017年から人事領域に異動。2018年にHRエンゲージメント室室長となり現在は主に採用責任者として従事している。

フラットな組織にこだわり、意思決定スピードを上げる

ーメンバーズはこの4月からグループ会社を統合してカンパニー制になりますよね。

早川:そうですね。今年新卒入社する約240人を加えて、1,500名ほどの組織となります。この数年は新卒採用をベースに組織づくりをしているので若手層の比率が高くなってきており、組織の拡大スピードが早く、組織の規模に合ったマネジメントにどんどん変えていかなくてはいけないと思っています。

小林:当社の事業を簡単にご説明すると、本体のメンバーズではデジタルマーケティングの支援を行っています。クライアントはほぼ大手企業。デジタルマーケティング部門などに我々がマーケティングチームとして入り、戦略・立案から実際の運用や支援までを行うのがメインです。

各グループ会社については、専門スキル領域の会社で構成されています。デザイナーやエンジニア、プログラマー、あとはフリーランスやデータアナリストに特化している会社など、それぞれが人材育成モデルを持ちながら事業を行っているのが特徴です。

グループ会社ではクリエイティブ人材が足りていないベンチャー企業への支援を行なっており、グループ全体で「クリエイター1万人構想」を掲げ、デジタル領域の拡大を目指しています。

ークリエイターが多く、多様性のある組織だと思いますが、組織づくりの方針はどのようなものでしょうか?

小林:社内で掲げているのは、「丸の組織」を作っていくことです。

早川:これまでのメンバーズの歴史においてはいろいろな紆余曲折がありましたが、行き着いたのは「マネジメントって大事だよね」ということです。しっかりマネジメント層の育成をし、自律自走的なチームマネジメントができる体制をつくりたいと。ただ、いわゆるピラミッド型の組織構造で社員数が増えて拡大を続けていくと、どうしてもスピード感を持った意思決定がしにくくなり組織としての成長が鈍化してしまいます。なので、フラットな組織でありたいというのが、チーム運営の基本方針となりますね。

ー「フラット」というのはどういう意味でしょうか?

早川:各チームが自律自走的にチーム運営できる組織を目指しているという意味です。具体的には、各チームのマネージャーはあくまでチームの役割のひとつであり、マネージャーとスタッフはフラットの関係性の中でチームに所属するメンバー全員が何らかの役割を持ち、フラットな状態でチーム運営する。それを「丸い組織」と呼んでいます。

ーフラットであるために重視していることは何でしょうか?

早川:お互いに「教えあうこと」や「全員が何かの役割を持つこと」を推奨しています。戦略的に新卒採用を推進していることもあり、入社2年目からは自ずと教える側(メンター)になりますよね。また、当社の主戦場であるウェブ・IT業界はテクノロジー変化も大きく、特にこの数年やこれからの時代は業界変化がさらに加速することが想定されます。会社側から何かを提供して都度教えていくスタンスだとそのスピード感についていくことができません。ならば社員自身がトレンド情報を自らピックアップし、自分自身の成長に繋げるだけでなくチーム成長やメンバーズそのもの成長に繋げることが出来るように新しい学びとしてシェアしていくような文化をつくろうと進めています。

ーその時に、「丸い組織」だと情報共有もスムーズにいくと。

早川:例えるならば、一つひとつのチームがベンチャー企業のように自律自走的に変化してくことで、チームごとの成長スピードが加速化していけるのかなと思っています。それが個人の成長にもつながるわけですしね。ただ、メンバーズとしての共通価値観をベースとしたミッション・ビジョンに共感して集まった集団でありたいと考えています。

全社員からヒアリングし、2030年に向けたビジョンを策定

ー組織に一体感を持たせるために、どのようなメッセージの伝え方をしていますか?

早川:当社では、年に一度、全社員がミッション・ビジョンについて考え、仲間との繋がりを作り、考えを共有・共創する場として「Membershipトレーニング」という場を設けています。

採用の時点でミッション・ビジョンに共感している方に入社いただいていますが、日々の仕事に追われている中で忘れてしまいこともありますし、目の前の役割と直結しにくくなってしまうこともあります。だからこそ、毎年1回はミッション・ビジョンについてのみを話す場をつくることで、メンバーへの浸透を図っています。

小林:まさにこの4月から2030年に向けた新しいビジョンを掲げるべく、早川を含めたプロジェクトメンバーが動いてきました。

早川:このプロジェクトでは、現在、全社員を巻き込んで2030年に向けたビジョンを作っているところです。30回くらいに分けて全てのグループ会社や拠点を回り、全社員とワークショップを行い次のビジョンを考えるための材料や意見をもらいました。

ー全社員ということは、1000人以上になりますよね?

早川:そうなりますね。在宅勤務の社員などはオンラインでつなげてワークショップや意見交換をしています。

小林:確かに全員の意見を吸い上げるのは大変だと思いますが、年に一度でも、ビジョンについて考える場がすでにあったという点は、すごく重要なことでしたよね。

早川:まさに当社が掲げる「全員参加型経営」にも通じる部分です。組織にとってビジョンはものすごく大事なもの。だからこそ、上から下りてきたビジョンではなく、「自分ごとで語れる一緒に作ったビジョン」を持ちたいと思っています。その方が、パワーがあるじゃないですか。

ー本当にそう思います。ちなみに、他にも全員参加型で実践していることがあれば教えてください。

小林:委員会活動ですね。「メンバーズウェイ委員会」というもので、各部門からの立候補で集まったメンバーを中心に、年に一度、協議会を開いて経営のボードメンバーと協議をします。メンバーは全社員からアンケートを取り、制度や仕組みなどを起案して実行まで持っていきます。まさに全社員の思いを形にするための仕組みで、会社運営に社員の声を反映させることはすごく大事にしていますね。

ー主体性を育むことにもつながりそうですね。

小林:それはあると思っています。先ほどのビジョンの話ではないですが、情報が階層的に落ちてきたり上がったりするよりも、自らが主体的に動くことで会社づくりに関われるということを体現する制度として育っていると思います。

早川:こうしたいろいろな取り組みを通じて、社内でも変化を感じる場面はありますよね。

小林:まず、いろんな部門の声を吸い上げるので、結果的に相互理解につながっていると感じます。例えば、どの会社でも現場とバックオフィスはぶつかりがちですが(笑)、お互いの声がちゃんと聞こえてくることで、みんなが俯瞰的にものを見られるようになる。閉鎖的になりにくいのかなとは感じていますね。

それに、若手メンバーも率先して参加してくれるので、若い力、バイタリティみたいなものが出せる場になっていて、活力を生んでいるようにも感じます。

早川:大事なのは、社員みんなが意見を言える組織文化であり、その意見が反映される会社であり続けることだと思っています。

組織としてのあり方まで考えて目標設定し、評価を行う

ー主体性を育てていく中で、社員一人ひとりの役割やミッションについてはどのようにお考えでしょうか?

小林:1つは、先ほどお話ししたようにそれぞれがビジョンについて考える場を定期的に設けているので、自ずとミッションについても意識する文化はできていると感じます。ビジョンについて考えるとなると、今の自分、次の自分、次の未来をどう描くかということはどうしても意識するわけで、それを毎年繰り返す中で個人の成長だけでなく、会社としてのエンゲージメントにもつながっているのかなと思っています。

早川:その他、半期に一回、チームで作成する「アカウントプラン」というものがあります。自分たちの目標だけでなく、お客様の目標、さらにはCSV(Creating Shared Value)を実現するためのプランなんかも組み込んでもらうのですが、それをまとめる過程でそれぞれの役割を宣言し合いながら作成してもらいます。そうすることで、自分もチームの仲間もそれぞれの役割を理解し、腹落ちした状態で前に進めることができます。

小林:また、アカウントプランによって取り組んだことについては、社内で積極的にシェアしてもらっています。これは評価の話にもつながっていて、ただ売り上げが上がってよかったというだけでなく、我々が目指していることが一つずつ実現できているんだということを共有し、その成果をきちんと評価する仕組みも整えています。

ー評価のお話が出ましたが、評価という点で意識していることがあれば教えてもらえますか?

小林:半期ごとに目標設定し、振り返って評価をするということを続けていますが、中身については「業績目標」「コンピテンシー」「スキル」という3つの大きな枠組みで評点をつけるようにしています。

例えば業績目標については、ただ売り上げだけの話ではなく、そこに育成目標や生産性向上の取り組みなども設定します。チームに対しての貢献やメンターとしての行動目標などを入れ込むことで、教え合うことへの意識を高めるのです。ただ業績が上がったからそれでいいというのではなく、組織としてのあり方まで考えて目標を立ててもらい評価することを大事にしています。コンピテンシーについても、全18項目に細かく分け、それらを5段階評価するやり方で評価を行っています。

ークリエイターの評価については、どうされているのですか?

小林:クリエイターの上司が直接クリエイティブに関わっていないということもあるので、専門知識のある人や、違う部門の人でクリエイティブに精通した人がクロスで評価する体制も整えています。分かる人がきちんと評価することで「自分の力を発揮できている」という自信にもつながりますし、公平性も担保できると考えています。

早川:当社の評価ポイントで重要視するのが「チャレンジ」なんです。コアバリューでも掲げているのですが、「チャレンジして失敗したことに対してマイナス評価はしない」「チャレンジしたことそのものを評価する」という考え方が基本にあります。

わかりやすい例としては、新規の子会社や新しい事業については、社長は社員の中からエントリーしてもらう公募制で決めています。実際に、新卒3年目の若手社員が手を挙げて、今ではグループ企業の社長をやっています。

ーチャレンジを推奨する理由とは?

早川:社員数は増えていますが、私たち自身は今でも自分たちはまだまだベンチャーだと思っているんです。新しい領域に対してチャレンジしていかないと、会社としての成長は止まってしまいます。社員の成長という点でも、新しいことにチャレンジしていくことは非常に大事だと考えています。

社内講座を充実させ、社会や外部の人たちとの関係づくりに役立てる

ー早川さんが中心となって人材育成にも力を入れていると伺っていますが、どんな取り組みがあるのか教えていただけますか?

早川:先ほどお話しした「教え合う」「学び合う」という考え方をベースに、「CCD Lab.(Co-Creation Digital Lab.)」という社内講座を用意しています。

社内の人だけでなく、外部の方に技術顧問として入っていただいたりしながら、様々な領域で活躍されている講師によるレクチャーが受けられるのが特徴です。年間で約200程度の講義を実施し、昨年1年間の受講者数は延べ4,000人を超えています。一部の講義は社外の方にも開放しており、社外との交流やネットワークを作る場所にもなっています。

ーどういった内容の講座があるのですか?

早川:「自主性のある学びの共創」を目指していて、デジタルマーケティングはもちろん、UXデザインなどの次世代を見据えたクリエイター向け講座も多いですね。ほかには、マネジメントや社会課題の解決などをテーマにした講座は人気が高いです。デンマークの考え方をベンチマークした講座も多く、社会課題の解決とデザインの関係を学ぶような講座は人気がありますし、関心も高いようですね。

今後、少しずつでも進めていきたいのが、学んだことを日本中の拠点や地域に還元することで、それぞれの地域の課題解決に役立てていくという取り組みです。例えば、社員が地域の学生さんと一緒に課題解決のために何かを作ったりするなど、世の中に貢献するための場を生み出していけたらと考えています。

ー学びをアウトプットにつなげていく、ということですね。

早川:これは社外のクリエイターに講座を公開している話とも通じているのですが、私たちのナレッジを外部の方々へシェアしたり、たくさんの人と一緒にピアラーニングを進められるようなことにもっと積極的に取り組んでいきたいと思っています。

今後の思想としては「クリエイティブ人材10万人育成」といっていますが、持続可能な社会を一緒に作っていく仲間の輪を広げていくことが大事だと思っていますし、それは間違いなく社員の成長にもつながる話だと考えていますね。

ーいろいろな取り組みを進めるメンバーズですが、最後に2人が考える「理想の組織像」について聞かせてください。

早川:経営指針でもある「超会社」という言葉に尽きるのかなと思っています。社員の幸せがあって、会社の成長があって、それが社会貢献につながっているという状態を、常にバランスよく作っていくことを目指したいです。会社が成長していても社員が幸せでなければ意味がないですし、社員は幸せでも会社の成長がなくては、組織・会社である意味がないと思いますし、何よりその先の未来や社会への貢献が実現できているかどうかを大切にしたいです。

小林:未来志向であることはすごく重要で、会社のことだけでなく、世の中のことにもきちんと目を向けられる状態を目指したいと思います。組織全体で、仕事を通じてどういう未来を作っていきたいかがきちんと描けて、そこに向けて力を合わせて進んでいけることが大事だと考えます。

その時に、ユニットごとにより良くチーム運営できる状態をつくるためにも、wevoxをもう少し使いこなしていきたいと思っています。今は理想の運用には程遠い状態ですが、情報をオープンにするなど活用の仕方次第で、もっとメンバーの育成にも役立てられるのではないかと期待しています。

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